失注理由の聞き方(確認方法)
随分前に「失注を分析する大切さ」という記事を書いた.
その記事の最後の方に
「ヒアリングをして,失注要因を把握する」
と書いているところがある.
ここでは「出来るだけ聞いてみましょう」とさらっと流しているが,どうも聞けない人が多いようだ.
そこで,もう少し詳しくどのように聞けばよいかについて書いてみよう.
購入しない理由は尋ねてよい
「商談」までいっている場合,一度は合意までいっているので,なぜ購入をやめたのかは何か特別な理由がない限りは教えてもらえる.失注理由は聞いていいのだ.失注理由は明確になるはずなのだ.
もし教えてくれないとしたら,それは「商談」ではなかった可能性が高い.
一度は合意しているのにそれを断るということは少しは負い目があるはずなので普通にコミュニケーションできる人なら回答してくれる.
変に忖度して聞かない人がいるが,これはおかしい.
「買う」と約束はしていないが,購入条件に一度は応じている.
だから,それを断るときは理由なしには断りにくいのが普通の人間である.
ただ,後から聞くのは方法として最善の方法ではない.
商談成約条件を確認しておく
最善なのは商談が成約(受注)に至るためにはどうなればよいのかをあらかじめ確認しておく.
断られるとなんとなく雰囲気的に聞きにくくなるのは分かる.だから断られてから理由を聞くのではなく,商談状態になった時点でこの商談がうまく行かないとしたら,それはどういう場合かを聞くのである.
「もし買わないとしたら,どういう場合ですか?」
「もし契約されないとしたら,どういう場合ですか?」
そうなると最も気になるのは決済権だ.
決済権がない人は買わない理由が他人のせいになってしまうからだ.
決済権がある人
つまり,商談を始める際に「決済権がある人」と話をするのが確実な方法である.
決済権を持っていれば,買う理由も買わない理由もこの人が決める.
従って,嘘をついていなければ明確に購入しなかった理由が断った本人から直接分かる.
よく理由をうやむやにしてしまう方法として,「だれそれが買うな」とか「だれそれが買わないほうがいい」と言ったとか人をだしにされることがあるが,決済権があることが分かっている場合,そのように逃げることが出来なくなる.
この場合,誰それがブレイン(キーマン)というケースもあるが,それが分かった場合は商談の場への同席をお願いするか,個別に連絡を取る.
ただし,決済権のある人が忙しいケースも多く,その場合はその人抜きでも商談を進めざるを得ないこともよくある.
価格を理由にされるケース
断り文句として「価格が高い」と言われるケースは多いだろう.
実際問題,「商品・サービスというのは価格相応」なものである.
だから高い場合はそれなりに理由があるはずだ.
よって「価格が高いから」という断りの理由は本当の理由ではない可能性が高い.
そもそも「価格が高い」は理由ではなく,結果なのである.
「〇〇〇〇だから価格が高い」と思っているのである.
これをはき違えている人が多い.価格が高いと言われるとすぐ諦めるのだ.
こういう場合に真実を知る質問方法には
- いくらであれば買えるのですか?
- なぜ高いと思われるのですか?
などがある.これにより,もっと具体的な理由が出てくる.
- 競合がいくらだから,それより安ければよい.
- 必要ない機能がついている.機能を省いて安くしてほしい.
- 自分が決済出来る金額を超えている.
具体的な理由が出てこない場合はますます「価格が高い」は理由ではない.
ただの「当て馬」など別の要因を考えたほうがよい.
「価格を安くしろ」と言ってくるお客様に対する対処法は既に別の記事に書いているので,そちらを参照してほしい.
むしろ高く売ることを推奨している.
仕様を理由にされるケース
仕様を理由にされる場合,仕様が不足しているケースと十分すぎるケースがある.
不足している場合は何か別の提案をしない限り無理だろう.
また十分すぎるというのはいわゆるオーバースペックというものだ.
オーバースペックの場合,価格が十分安ければ問題ない.
通常オーバースペックの場合は予算もオーバーしていることが多い.
こうなると先ほどの「高いから買わない」と似たようなことになる.
この場合も対処法は一緒だ.
納期を理由にされるケース
納期が間に合わないという場合は詳細内容を聞くしかないが,本当に間に合わない場合はどうしようもない.
営業でどうこうできる問題ではないので製造部門など他の部署への助けを呼ぶしかない.
こういうことが起こらないように本社部門は日ごろから生産・在庫システムを構築しておく必要がある.
決済権がない人
決済権がない人が断ってくる場合はどうなるか.
一つあるのは
「稟議が下りない可能性がある」
と言われる場合.こういう場合は
「どういう時に稟議は下りないんですか?」
と聞くのである.しかし,それでも
「ちょっと分からないんです.」
と言われる場合は当て馬にされている可能性や営業側がしつこすぎてはっきり断ることができなかったために商談段階まで進んでしまって,お客様自身でも理由が分からない事態に陥っている可能性もある.
この辺りは微妙な状況なので経験や相手の気持ちを汲み取る能力の有る無しによって理由が判明する場合と判明しない場合がある.
言いたがらない場合に気を付けることはあまりしつこく聞いても良いことはないということだ.
無理やり聞いても,
- 嘘を言われるか
- 徹底的に嫌われるか
のどちらかしかない.つまり何も得することはない.やめておいた方が良い.
失注理由は前もって確認しておく
以上のように失注条件を商談時に確認しておけば,後から失注理由を聞く必要もないし,あらかじめ対応策を考えることも出来る.
これらは当たり前のことだと思っていたが,どうもそうでもないようなので改めて記事にしてみた.
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