必要でなくてもあると得する(使うと便利な)もの(フレーミングの話)
フレーミングとは
情報が提示される方法(枠組み)をフレーミングという.
「人は物事を選択する際に情報が提示される方法(フレーミング)に影響される」ということだが,どのように情報を獲得したかによって,考え方が変わってしまうということである.
例えば,90点をとったテストがあったとして,
「90点しかとれなかったらダメだよ.」
といわれた場合と
「90点もとれたんだからよかったね!」
といわれる場合で印象が変わってくるという話にも似ている.
同じ情報であっても提示のされ方によって受け取り方が変わってしまう.
本の中で提示されていたのは同じ割合であっても「生存率」と言った場合と「死亡率」と言った場合により,治療方法の選択に影響があったという話だった.
人間は損が嫌い
そこには
「人は便益よりコストを強調するような方法で選択肢が提示されるとき,判断結果にバイアスがかかりやすい.」
という話も書いてあるが,これは営業手法や広告の書き方にも応用されている.
いわゆる
「これを買わないと損しますよ.」
という営業トークである.
「これを買うと得しますよ,便利ですよ」
というより心に響くらしい.
「キャンペーン期限を過ぎれば値段が上がりますよ」
も同じ類である.
啓蒙商品を販売することの難しさ
啓蒙商品は付加価値が高いものが多いが,それだけ売るのに障害が高いともいえる.
啓蒙商品は「普段なくても困らないがあると便利なもの」であるので,検索されることはないという話は以前に投稿したことがある.
「なくても困らないもの」というのは気づかないので自発的に検索することはない.
誰かに教えられる必要があるので,ホームページよりメール配信しましょうというのが先ほどの記事の主旨である.
ないと困るものは自分で探すのでホームページで待ち構えておけば,見つけてさえもらって,読んで納得さえしてもらえば売れるものなのでホームページに向いている.
しかし,以下のような「なくても困らないもの」はホームページで販売することは難しい.
ホームページの改良
具体的にいうと「ホームページの改良」「ログ解析」というサービスはなくても困らないものである.
しかし,改良して引き合いが増えれば売上は上がるし,ログ解析を行うことにより効率的にホームページを改良出来れば引き合いが増えるので,それにかかるコストが売上増加に見合うものであれば行ったほうが良いものである.
困っていないし,損はしていないので,このような商品を売り込むことは通常なかなか難しいのである.
営業支援システム
そういう啓蒙商品という意味では営業支援システムも同じである.
これも無くても営業は元々しているわけで別に困ってもいない.
なので,「余計なことをさせるな」「面倒くさい」と考えるのは普通である.
しかし,これも実際に使ってみると便利なことこの上ないだけでなく,使い慣れると無いと困るシステムである.
実際に販売する際には
「以前の会社で使っていたのに転職した今の会社にはない.不便すぎるので導入したい.」
というきっかけで話を頂くこともあるくらいだ.
要は投資さえすれば何パーセント(%)増し,あるいは何倍となって返ってくるものは投資しなくても特に困っていないので勇気がいるのである.
失敗した場合は損しかしないので,わざわざ損をする可能性を選びたくないというのは人間のさがである.
しかし,逆にいうとみなが乗らないからこそ,千載一遇の好機ということもある.
一度軌道にのるとやめない商品・サービス
カーナビという商品は「啓蒙商品」である.
- なくても困らないがあると便利なだけでなく
- 次に車を買った際になかったら普通は購入するかスマホをナビ代わりにする
とからである.
一度使ってしまうとやめられなくなる.
- ホームページの改良
- 営業支援システム
も一度使って軌道に乗れば,まずやめない商品であり,サービスである.
使わないことが実は損していること
啓蒙型商品のマーケティング
そういう啓蒙商品は知らないと気にならないので損している気にはならないが,本当のことを知ってしまうと損した気になる.
申請しないともらえない何らかの補助金や手当の類もそれに近い.
(もちろん信念でそういうお金はもらわないという場合は除外した話)
こういうものは自分で常に積極的に探している人でなければ,他人に教えられて初めて知って申請することも多いのではないか?
つまり「啓蒙」されて初めて利用するわけである.
もともと,人間は基本的に比較することや考えることが嫌いで現状維持が好きなのではないかと感じていた.
立っている人は立っていたい,座っている人は座っていたい.
これを「人間慣性の法則」といっていた物理の先生が高校の時におられた.
人は基本的に変化が嫌いなので「啓蒙商品」は販売が難しい.
変化によって,得するか損するか分からない.
損するぐらいだったら変化しないほうが良い.
変化はいろいろ面倒だ.
「変化しないと損をする」ということを明確に分かるように説明することが「啓蒙商品」のマーケティングには必要ということになる.
消費者として考えること
ここまでは販売側から考えたマーケティングの話になるが,購入側から考えてみたい.
では損をしたくないと考えたときにどうするのがよいのか?
「知らぬが仏」とはよく言ったものだが,得している人を知らなければ損していることにはならない.したがって知らないという戦術はある意味では間違ってはいない.
ただ,本当の意味で損をしたくないならば,それまで知らなかった商品・サービスを知った時に
「誰がどういう時になぜ,その商品・サービスを使うのか?」
ということを考える癖をつけることだ.
そして,分からない時はそれを使っている人に聞けばいい.
「なぜ,それを使っているのですか?」
と.
そうすれば,その人の特殊事情がそれを使わざるを得なくしている場合もあるし,あまり何も考えていない場合もあるが,なぜその商品がその人に使われているかが分かる.
大抵はあまり参考にならない理由が多いが,中には「なるほど!」という理由がある.
実はそれこそが大事なことなのである.
また,自分にも当てはまる場合は「早速利用しよう」ということにもなる.
参考文献
損が強調されなくても,冷静に判断できるようになれば,全体として得になる選択を選び取ることが出来る.
「物事の選択はよくよく考える必要がある」と考えさせられる本である.
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