言葉と知識の抽象度を考える
企業のホームページは見ている人に自社の商品を知ってもらい,買いたくなるように誘導する必要がある.
そのようなページを書く内容を考える際に言葉の抽象度が重要なのでその話を書くことにする.
その前にまず分かりやすい例として人との会話を例にとって考えてみる.
人との会話を考える
大前提として興味はあるのか?
人に話をする時にどこから話をするか.
そもそも,「その人が興味のありそうなことを選択しないと本当に一から説明することになって大変だ.」ということは誰でも感じることだろう.
つまり,まず確認すべきことは「相手は興味があるのか?」という点だ.
興味がない場合はその人の興味があることに関連付けられるのかを考える.
その関連付けもできない場合は,その話をするのは諦めたほうが早い.
そもそも,自分が「この人はこんな話に興味あるんじゃなかろうか?」という予想が外れたわけなので早々に撤退したほうが良い.
粘ったとしても,興味ないことを延々話す「うざい人」としかうつらないからだ.
幼い子供が訳の分からない話をするのは「話を聞く相手の身になってみること」が難しいからである.
相手の興味などはお構いなしに話をするのだから当然である.
幼い子の場合は許されても大の大人の場合は「うざい」となる.
「訳の分からない話を聞かされる」という状態と似た?ものに「話が飛びすぎてみえない」というのがある.
私なども「話が飛びすぎてついていけない」と言われることがたまにあった.
これは結局,自分にとって「当然だ」と思っていることが相手に取っては全然「当然」でなかったからなのである.
これは幼い子供とはまた別のパターンである.
これが背景知識の抽象度の問題である.
説明したいことの背景をどこまで知っているか
「背景知識」を考えるうえで重要なことは「抽象度」だ.
※抽象度とは
例えば,「メインクーン」という猫を考える.
右に行くにしたがって抽象度が上がる.
メインクーン → 猫 → 哺乳類 → 動物
メインクーンについての話をする時に
- メインクーンについて知っている人(他の猫も知っている)
- メインクーンについて知っている人(他の猫は知らない)
- 猫は何か知っている人(メインクーンは知らない)
- 哺乳類は何か知っている人(猫は知らない)
の四種類の人がいたとして,説明の仕方は全て変わってくる.
- 一番目の人とは抽象度のレベルが一致している可能性が高いので,いきなり本題に入っても問題がない.
- 二番目の人とは話す内容によってはいきなり本題に入っても問題はない.
- 三番目は猫の中でのメインクーンの特徴を説明すれば話を出来る.
- 四番目の人は猫の説明から始める必要がある.
これは会話している人は自然に出来ることではあるが,この辺りの上手い下手が話の上手い人下手な人を分けている部分かもしれない.
いずれにしても「メインクーン」は意味しているものが明確なので知っているレベルを理解することは容易だ.
抽象化すべきレベルの見極め
しかし,商品やサービスなど話をするものがそもそも人によって違うようにとらえられている場合も多いので,そうなるとその抽象化の理解度合いを知ることは難しくなる.
ずれを認め合うところから始まることも少なくない.
つまり,どこまで抽象化して理解しているか,これを見極めるのは難しいことだ.
その話題について自分より高い抽象化が出来ている相手なら何を話しても問題ないが,今,問題なのは逆の場合のことである.
先ほど「話が飛びすぎて...」と書いたが,自分の中では繋がっている話が相手によっては繋がっていないことがある.
それが知識の抽象度だ.
Π(パイ)型人間という言葉は聞いたことがあるだろうか?
深い知識をもつ分野を複数持ちつつ,浅く広い知識を持っている人間のことである.
上の横棒が浅く広くを表し,縦棒が深くを表している.深い知識が二本あるということ.
深い知識を複数持っている人間の話をそのような知識の持ち方をしていない人間が聞くと「話が飛んでいる」ように聞こえる.
これは相対的なものなので,私が聞いていて「話が飛びすぎて分からない」ということも当然ある.
つまり,自分が相手の知識の抽象度の高みに達していないのである.
その場合,どうするかというと相手に自分の抽象度の高さまで下りてきてもらい,説明してもらうしかない.
「聞くは一時の恥,聞かぬは一生の恥」である.
個人的にはこういう会話をする時は非常に楽しい.自分の知らない知識・考え方を教えてもらえるからだ.
人との会話はそれでいいのだが,ホームページはキャッチボールが出来ないためにもう少し深く考える必要がある.
ホームページの内容を考える
次にホームページについて考えてみる.
先ほど書いたようにキャッチボールは成立しない.
なので,相手の状態(ターゲットの関心度・背景知識)は前もってある程度決めておく必要がある.
どのような人たちにみてもらうか?
企業のホームページを前提に話をする.
商品・サービス内容をよく知ってもらうために説明をするわけだが,相手がどのくらい知識を持っていることを前提に書くか.
初心者と詳しい人,両方ともに満足するページを書くことははっきり言って難しい.
それは人と会話するときにある分野について話をするときに,素人と玄人を一緒に相手して両方とも満足させる話をすることが難しいことからも分かる.
先ほどの猫の例をとってもわかる.
では,どうすればいいか?
ターゲットを決める
ペルソナといういい方もあるようだが,ペルソナというのはかなり細かく属性を決めるものらしいので,ここでのターゲットとはちょっと違うようだ.
ここでいうターゲットとは素人か玄人かの違いぐらい,全く違うもの.
基本は初心者向けのページ
「心に触れるホームページをつくる」に詳しく書いているが,初心者向けにページを作るのが基本になる.
背景知識の浅い人向けにページを作って,そこから組み立てて徐々に知識を深くしてもらうようなページ構成が一番良い.
弊社のページでいうと,特選情報・コラムは初心者向け,サービスは少し知識のある中・上級者向けとなる.
このページで書いているようなものは基本初心者向けとなる.
ほとんどのページは抽象度の高くない人向けに出来るだけ分かりやすく親切に書くべきだ.
世の中,実は素人だらけ
私などもこうしてブログでページを書いているが,ほぼ素人である.
知らないことばかりだし,そのおかげで毎日面白いと思う気づきも多い.
だから,抽象度の低い言葉を使ってページを書いて,さらに抽象度を上げたページも書き,そこにリンクを張るようにしている.
つまり,ホームページの場合は説明する側が抽象度の低いところまで下りていき,説明しながら抽象度の高いところまで引っ張っていくイメージだ.
そうすれば辿って読んでもらえ,自然に読む人の抽象度レベルも上がり内容も理解することが出来て「読んでよかった」となる.
いきなり,抽象度の高い内容しか書いていないとほとんどの人にとって
- ちんぷんかんぷん
- 何言ってんだかわからない
- この会社ダメだわ
になってしまう.
抽象度レベルを同じにして話を聞いてもらうことが重要だ.
商品・サービスの良さを理解してもらうために
先ほどのように読者に抽象度を上げてもらってからでないと自社商品・サービスのメリットをしっかりとは認識してもらえない.
ある程度,その商品・業界に関しての知識がないとどこが良いのかは理解できないのだ.
だから,専門用語羅列でわかりにくいページに対して,
「これでいいんですか?」
と聞いたときに
「うちのページの内容が分からない人はお客様ではないから,このままでいいんだ.」
というのはちょっと違う.
どのくらいの抽象度を持っているか分からない未来のお客様に抽象度を上げてもらって,商品紹介のページまで辿り着いてもらえば,理解できる人になるし,当然お客様になる可能性だってある.
それでもキャッチボールする努力
ホームページは一方通行だが,お客様と話をする機会はあるだろう.
その際に
- 分かりにくかったところはなかったか?
- どこがよくて問い合わせをしてもらえたのか?
などを聞ければ会話のキャッチボールを少しでもすることが出来る.
いろんな人がいるのでお客様によって言われることはいろいろ違うのは当然だがその具体的な内容から抽象的なものをすくえるかどうかが重要なのである.
それによって,もう少し説明を増やすべきなのか,抽象度を下げるべきなのか,いろいろ検討することが出来るようになる.
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